ベーシスト鈴木良雄氏 出版記念パーティー

 息子がアマゾンに注文した本が、彼の誕生日に届いた。数年前に『BASS TALK』が熊谷のライブハウスにやって来たときに息子が誕生日ソングを演奏してもらって以来、CHIN(鈴木良雄)さんのライブに参加していたが、本を手にしている息子に『本の出版を知らせるメール』がCHINさんから送られてきたのだ・・・

息子は嬉しくなって、私にも本を追加注文してくれた。実は、秩父セメントの一年先輩に早稲田のジャズ研の人がいてスキー仲間として親しくしていたSさんに、少し自慢げに『CHINさんの本を読んでいるよ。』とメールしたところ、『出版記念パーティー』があるから一緒に行こうと誘ってくれた。

 Sさんに色々と手配してもらって2月13日に新宿の『ジャズスポットJ』に出かけた。14時開場であったが、少し早くに出かけ歩いて会場に向かった・・・元の厚生年金会館の近くと聞いていたがすんなりとは行かず、14時頃となってしまったが、一番前の席が確保できた。

    オーナーの幸田氏
    オーナーの幸田氏

 幸田氏もジャズ研でSさんの同級生で、片倉製糸に勤めていたころは秩父セメントの関連会社と同じビルだったこともあり親しい仲だと紹介してくれた。この店の社長が引退されるときにタモリ氏など仲間が発起人となり継続することになり、幸田氏がオーナーとして経営しているとのことでした。今日はジャズ研OBが詰めかけ70席定員に90人以上の来場ですと挨拶した。

 次に早稲田OBのマラソンの瀬古選手(現監督)が紹介されてマイクを持った・・・これが実に愉快なお話で”びっくりポン”でした。彼の奥さんが中野でジャズ喫茶をやってることもご縁かも知れないが、ご夫婦で参加され入り口に大きな花束を贈呈していた・・・Sさんの話だとテレビで解説をしている時とまるで違うキャラクターが出るのだと言っていた。

 更に名古屋のライブハウスのオーナーや一ノ関のジャズ喫茶『ベイシー』の菅原氏や田沢湖ジャズ倶楽部の荒川氏など遠方からの参加者も多かった。一部終了後に秋田出身なので荒川氏と挨拶を交わした。ことをCHINさんに話したら、彼は高校の先生だったが今は小学校に勤めながらジャズを教えていると教えてくれた。彼は、ジャズ名盤の選考者の一人であることを後で知った。

 また、発起人の一人がマイクを持ち、初めてCHINさんのアダナ誕生秘話を話してくれた・・・CHINさんが1年生で先輩のサックスを演奏会場に運ぶ途中でタクシーに置き忘れたことがあるそうで・・・その時先輩から『ちんたらするな』と言われ、以来『チンタラ』と呼ばれるようになったが、流石に後輩が先輩を『チンタラさん』とは呼べなくなり『CHINさん』になったとのことであった。1年後輩のタモリは、暫くCHINさんを中国人かと思っていたらしい・・・今では日本ジャズ界ベーシストの巨匠鈴木良雄氏もこの日ばかりは、ニコニコしながら『CHINさん』誕生秘話に頷いていた。

  ベーシスト鈴木良雄氏
  ベーシスト鈴木良雄氏

 鈴木氏の本出版のいきさつも面白かった。最初CHINさんとピアニストの山本剛さんをモデルに『良雄とつよ子』という4コマ漫画を描いてくれた人がいて、それをCHINさんが出版社へ持ち込んだのがきっかけだそうです。ところがジャズ好きの編集者がいて、『ジャズの入門書』の製作を提案してくれてこの本ができたと語った・・・

それが3年前のことでタモリ氏を初めとするジャズ仲間50人にアンケート調査を行い、約1000枚のアルバムから20枚を選び、同時にアルバムのアーティストのランキング付けを行ってもらった結果に従ってCHINさんが一枚一枚アルバムを聴いて語った録音から原稿を起こしたものだという・・・だから3年もの時間がかかり、アンケート調査のことを忘れてしまった方もいたとCHINさんは苦笑した・・・

 ところがCHINさんがジャズの話を始めたら顔色が変わった・・・アフリカ大陸から大量拉致された黒人が、一日の厳しい労働を終えて素足で大地を踏み鳴らしながら自由な歌詞で唄ったのが、4ビートのジャズ・ブルースだと語った。ジャズはアメリカで生まれたが、その背景には根強い人種差別があったのだと真剣に語りかけた・・・ガヤガヤしているホールの奥に向かって『話をしているから静かにしろ。』とCHINさんがいきなり大声を上げた。その場の空気が一瞬にして早稲田ジャズ研の先輩と後輩の関係に変った。ジャズの本場NYで12年もの活動を通して肌で感じたことを伝えたかったのであろうと思った・・・最後に2月14日16時からCHINさんの祖父のテレビドラマ『バイオリン王鈴木政吉物語』が放映されることを紹介して話を終えた。

 山本剛(p)、村上寛(ds)
 山本剛(p)、村上寛(ds)

 CHINさんと山本剛さんのデュオは、前橋のGfaceカフェで2度程聴いたことがあるが、村上寛のドラムは初めてでした。ジャズ通のSさんは村上さんの腕前を知っていたようだ・・・昨年の12月27日に新宿文化センターでの新宿ジャズフェスでは恩師・渡辺貞夫の後で演奏していたCHINさんには固い表情に見えたが、今日のCHINさんはリラックスして楽しそうであった。CHINさんとピッタリと息の合う山本剛さんは、この本のアンケートでウィントン・ケリーのアルバムを2枚も選んでいた。『ケリーはピアノで歌っている。』とCHINさんは本に書いていたが山本剛さんの滑らかに転がるような音色が、このことなのでしょうか・・・

  ゲスト峰厚介(サックス)
  ゲスト峰厚介(サックス)

 サックスの峰厚介さんがゲスト出演してくれた。横浜ジャズでは満席で入れなかったが、別のホールでヒンチヒッターで出演したライブを聴くことがでした。新宿ジャズフェスで後部座席から双眼鏡で眺めた時は、赤いシャツにサスペンダー、皮のベストに皮のハンチングスタイルで津川雅彦に似た面立ちに見えた。今日、真近に見るとハンサムな老紳士であった。息子が教えてくれた峰さんのアルバムには彼が作曲した『CHINさん』という曲が2曲も納められていた。こうして駆け付けて来るところをみると、やはりCHINさんとの親交の深さがうかがえる。

友情出演の峰さんのサックスは素晴らしい。バーボンを呑みながら聴くサックスのビブラートの効いた音色が心を震わせるのだ・・・ソロが終わると思わず『イエィ、イエィ』と声が出てしまうのです。

 ゲスト野力奏一(ピアニスト)
 ゲスト野力奏一(ピアニスト)

 ゲスト野力奏一はBASS TALKのメンバーでもあり、『私の作曲した曲を釣って来た魚を調理するように見事にアレンジしてくれる人で、絶対音感の持ち主だ。』とCHINさんが紹介したのを聞いたことがる。私も野力さんとは面識があり、今日も挨拶を交わすことができた。野力さんも時折グラスを傾けながらの演奏は、ますます滑らかで心地良かった・・・

 山本さんと野力さんのリレー
 山本さんと野力さんのリレー

 今度は山本さんと野力さんのピアノのリレー弾きです・・・1曲のジャズの途中でピアニストが交代する訳で、興に乗って来た時のジャズならではの醍醐味を感じさせられた・・・このコンビのリレー弾きは前橋のGfaceカフェで聴いたことがあったが、今日は格別でプレィヤーみんながCHINさんを讃えて演奏しているのが判った。 

  タモリ氏が駆け付けた
  タモリ氏が駆け付けた

 祝賀会の発起人の一人であるタモリ氏が忙しいスケジュールを縫って駆け付けてくれた・・・

相変わらずの毒舌のジョークに会場がどっと沸いた。CHINさんがタモリ氏にトランペットで一曲やるかと尋ねたら、後ろの方から『止めとけ!』とヤジが飛んだ・・・ここでは早稲田ジャズ研の先輩と後輩の関係になってしまうのかと・・・ 

  一関の菅原氏とタモリ氏
  一関の菅原氏とタモリ氏

 タモリが『ヨルタモリ』で一ノ関でジャズ喫茶『ベーシー』をやっている菅原氏の真似をしていたようですが、私は観たことがなかった。

東北人らしく少しはにかむ菅原氏とタモリのトークも楽しかった。実は、CHINさんは試験の時は菅原さんの後の席であったそうです。菅原さんはソサィティ・オーケストラのバンマスとしてドラムを叩いていたそうですが、CHINさんも夏休みにピアノで共演したことがあると書いてあった・・・その後、菅原さんはプロを諦め一関に帰りジャズ喫茶『ベーシー』に本格的なオーデオを入れて凄い音を聴かせてくれる・・・その音の凄さを『神が降りてくる音だ』とCHINさんは表現していた。

   CHINさんのピアノ
   CHINさんのピアノ

 1次会が定刻に終わると、早稲田ジャズ研の仲間は連れだって新宿の街へ出かけて行った・・・Sさんも仲間に誘われて出て行ったが、暫くして戻ってきた。仲間が熊谷から来た私を優先するようにと配慮してくれたのだ・・・それからSさんは、CHINさんがピアニストからベーシストへと転向した経緯を話してくれた。それは渡辺貞夫バンドにSさんが国立音大卒のピアニスト連れていったのがきっかけで、渡辺貞夫がCHINさんにベーシストの道を進めてくれたとのことだったようだ・・・

 そんなCHINさんが早稲田ジャズ研OBのプレィヤーにせがまれてピアノを弾いてくれたのだ・・・私は初めて聴くCHINさんのピアノに感激しました。

     本の編集者
     本の編集者

 この方が本の編集者です。アンケート調査を行い、その結果を集計しジャズアルバムの名盤を取り揃え、CHINさんに聴いてもらい、その話を聴いて録音された音声から原稿を起こされた方です。その作業も3年間も続けて出来上がったこの本はとても読み易いものでした。読書があまり得意ではない私でも短期間で読むことができた。

 丁度名盤55位まで読み終えた2月15日にCHINさんからお礼のメールが入った。私はCHINさんに次のようなメールを返信した。

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こちらこそ、本当に楽しい夜を過ごさせていただきまして御礼申し上げます。

実は、『CHINさんの本を読んでいるよ』と少し自慢げにSさんにメールして『出版記念パーティー』があることを知りました・・・幸運でした。

殆どが早稲田ジャズ研OBのお仲間にいれていただいて、好い雰囲気(THIS IS THE JAZZ)を味あわせていただきました。

ご本は本日55まで読み終えました・・・素人の私も楽しく読ませていただき、これから少しは息子の話に合鎚を打てるかなと思っております。

それからテレビ観ました。息子が録画してあるので、また見直したいと思っております・・・

また、ブログに掲載して友達に自慢しようと目論んでおります。

3月の熊谷ライブを楽しみにしております。

そのとき本にサインをいただいて、早稲田の落研だった奴で、最近ジャズにはまっている友達に差し上げたいと思っておりますので、宜しくお願いします。

                              小南より

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 ブログを書き終えて、一杯やりながら第1位の『Kind of Blue』を聴いています・・・そしてCHINさんの本をめくると、こんなことが書いてあった。

 マイルスの生き方には、「黒人音楽の地位、黒人の地位をあげる。」というバックボーンがあると思う・・・そしてマイルスは音楽に対して『オネスティ(正直であること)』が大事だと言っていたと・・・生きることにも・・・

 この本をチラチラ眺めながらグラスを傾けジャズを聴こうと思っています。