第15回 東京 Jazz Festival 2016

 3カ月程前に息子がチケットを確保してくれた東京ジャズを楽しみにしていた。東京ジャズには本場アメリカを始め世界中から有名なプレイヤーがやってくるので、とても人気のあるジャズフェティバルである。チケットも発売されると間もなくソールドアウトしてしまうので、息子がネットで申し込んだようだ。

9月3日、数年ぶりでの東京ジャズなので浮き浮きした気持ちで東京国際フォーラムに向かった。

 11時過ぎに東京駅に着き地下街で昼食をとった。暑かったのでビールを一杯飲んでから、そのまま地下道を通って会場に向かった。そして、初めて東京ジャズにやって来た時に通った場所に出た。その時は、酸素ボンベを3本背負いながら、息子の車いすを押して、苦労して東京ジャズにやって来たことを懐かしく思い出した。

 あれから何年経ったのだろうか・・・今では、息子に急かされながら、息子の後を追いかけるありさまである。地上に出ると屋外ステージから、ジャズの音が鳴り響いていた。

 会場の2階フロアには、出演した歴代の名プレイヤーの写真が飾られていた。まず、今晩出演する渡辺貞夫さんの写真が目に留まったのでスマフォで撮った。最近、息子と私のお気に入りで、今回もチケットを取ろうとしたが、上手くいかなかったようだ・・・

 次に、ベースの唸るような響きに魅了されて、私が初めてベースが好きになった時に聴いたロン・カーターの写真があったので、シャッターを切った。それ以来、先日の講演で「私は、日本のチン・カーターです。」と言うほどにロン・カーターをリスペクトしているChinさんのベースを好んで聴いている。

 第1ステージは「小曽根真 presents」で音楽大学の若手プレイヤーを集めてのビッグバンド・ジャズであった。私はどちらかと言えば、少人数構成のゆっくりしたジャズが好きである。

 しかしビッグバンドのハーモニーも心地よく、いつの間にかうっとりしてしまい、しばしば睡魔におそわれた。

 本日の最終ステージが終わって外に出ると、NHK FMの特設スタジオがあり、ジャズ評論家の小川隆夫氏が司会で生放送が行われていた。そこに小曽根真と数名の学生が出演していたので、立ち止まってしばらく聴いた。

 第2ステージは「寺井尚子 meets パブロ・シーグレル」の”THE JAZZ TANGO PROJECT”

であった。今日は寺井尚子のバイオリンの音色が楽しみでやってきたが、タンゴに欠かせないうら哀しいバンドネオンの旋律も心に沁みてきた。

 寺井尚子の最初の曲は、ものすごくアップテンポの曲で、演奏後にマイクを握った彼女は、大きく肩で息をして、途切れ途切れの挨拶であった。

まるで、格闘後の形相であり、オーケストラと一緒に演奏するバイオリニストからは想像もつかない程のエネルギーを使っているのではないかと、思わず大きな拍手を送った。

 最後のステージはハービー・ハンコックであった。息子の話では、昨夜までブルーノート東京で公演していたそうだ。この前、渡辺貞夫さんを聴きにブルーノート東京へ行ったときの予告では、チャージ料が35,000円とあったが、ジャズ界の大物なのです。でも、彼が演奏するジャズに私はついて行けなかった。息子の話では、ハンコックはフリージャズの分野で常に革新的なジャズを開拓しているとのことであった。やはり、この会場でも中年以上の年配者よりも若い層のジャズフアンが「イエー、イエー」と熱狂的な拍手を送っていた。私は、少し冷めた感じで聴いていたが、かなり激しい旋律にも関わらず心に沁み通るものがあったのでしょうか、うとうとと眼を閉じてしまっていた。時々、横の席の息子にちょいとつつかれて眼を開けた。

 

 いつもは、2、30人の小さなジャズバーでオンザロックのグラスを傾けながら聴くことが多かったが、今日は5000人も入るというこんなに大きなホールでジャズを聴くことはめったにない体験であった。それにジャズフアンの多くは中年より上の年代かと思い込んでいたが、ここでは結構若い年代のフアンも多く、これまでの先入観が拭いさられたことは、何だか嬉しいことであった・・・