BISON TRIO at SPACE1497 2017.7.13

  <行田の古代蓮(2014年)>
  <行田の古代蓮(2014年)>

 「日本の七十二候を楽しむ」によると7月12日から16日ごろを「蓮始めて開く」と言って、蓮の花が咲き始めるころだという。

 左の写真は「行田の古代蓮」であるが、何十年か前に耕地整理のために土地を掘り起こした時に2000年ほど前の古代蓮の種が出土し、その種が発芽して今日のように沢山の花を咲かせるようになったそうだ。

 蓮は夜明けとともに咲き始めるので、朝食をとらずに家族を連れて何度か観にいったことがる。しかし、近年祖父、祖母と相次いでこの時期に不幸が続き、行田の古代蓮を観に行けなかったが、7月いっぱいは見ごろどというから今年は行ってみようと思う。 

 7月13日18時半を過ぎても陽は高かったので、初めてSPACE1497の写真を撮った・・

 このジャズのライブハウスSPACE1497は熊谷からの妻沼街道沿いにあるが、たいていの人は見過ごしてしまうかも知れない。でもこうして写真で眺めてみると、中々洒落たライブハウスであったのかと改めて思った。

 私が写真を撮っているとSPACE1497のオーナーがやって来た。

 先週6日の「Bungalow」のライブにも訪れたし、既に顔馴染みではあるが、オーナーと一緒に写真を撮らせてもらった。

 するとライブハウスを建てた当時のことをいろいろ話してくれた・・・

 この看板は、鉄鋼関係の仕事をしているジャズ好きの友だちが作ってくれたもので、薬品で鉄板を溶かして文字を刻んだものだと言った・・・文字によっては全部溶け落ちてしまい難しかったそうだが、確かに切り絵と同じ手法で文字をくり貫いてあった。近づいてよく見ると”P、A、4”など微妙な残し方であった。厚さ3ミリもの鉄板の加工には、随分と根気を要したであろうが、風雨に晒され、赤錆を帯びたSPACE1497の看板には風格すら感じられた。

 昔はバーベキューパーティーもやっていたという裏庭の写真も撮らせてもらっていたら5時からやって来ているというバイソン片山の熱心なフアンが「前回も来ていましたね」と話しかけてきた・・・

 そんな様子を見たオーナーが蚊取り線香と虫よけスプレーを持って来て、田んぼも近いので蚊が多いから使ってくださいと言ってスプレーを手渡された。 

 中に入るとバイソンさんが居たので挨拶を交わした。息子がネットで入手したCDにサインをお願いしたら、びっくりしたような顔付きでしげしげとジャケットの見ていた。

「わあ!これは初めてレコーディングしたアルバムだ!演奏を聴きながら、友達が描いてくれたものだ。」といって本当に懐かしそうに暫くジャケットを眺めていた。

 まだ24歳血気盛んな時に生まれ故郷の気仙沼で収録したが、当時はLPレコードの時代であったと言いながらサインしてくれた・・・

 そして思い出したように、そのLPが10枚ほど家に残っているから、息子に1枚プレゼントしてあげると言った。そのLP版は「ジャズ100選」に選ばれ、記念に貰ったものだという。だが、ジャケットの原画は誰かに持っていかれ手元にないとをしきりに悔やんでいた・・・

 そのLP版をCD化されたものには、たった5曲しか入っていなかった。たしかに当時のLPの容量からすると、5曲収録するのが精一杯だったのだろう。

 私もそのCDを聴いてみた・・・やはり24歳のパワフルなドラムが響いてきた。取り分け、5曲目のファースト・フライトのドラムは凄かった・・・

 以前バイソンさんのHPに「ドラム教室」で教えているとあったが、今日は開演前にドラムの指導が始まった・・・お客さんに何度もお許しを請いつつ、真剣に指導を続けられていた。最初はピアニストの小池純子さんだとは判りませんでしたが、彼女も近くに行ってその様子を観察されていた・・・この青年と彼女はどういう関係なんだろうなどと考えながらその様子を眺めていた。

 スティックの使い方やブラッシングなどを実際にやってみせて、何度となく「リラックス、リラックス」と言っているようでした。それに対して青年は日本語で応えていたが、その風貌からはハーフのようである。

 おそらく彼のDNAにはジャズを生み出した源流のリズム感が受け継がれいるに違いないと、私はその時思った・・・

 そしていつの日か私たちに素晴らしいドラムを聴かせてくれるだろうと心の底で願っていた。何の根拠も無しに、ただ私はそう考えているのだ・・・

  <ドラム:バイソン片山>
  <ドラム:バイソン片山>

バイソン片山さんとは6月20日に山本剛と与世山澄子のライブの時にここSPACE1497でお会いしている。その時のブログでもご紹介しているが、バイソンさんは気仙沼のお寺さんご子息で、お兄さんの勧めでドラムを始めたらしい・・・彼は日野元彦に師事し、NYでも修業を積みハンク・ジョーンズ、渡辺貞夫 シダー・ウォルトンなどのジャズ界の巨匠たちとの共演を果たしてきたドラムの名手なのだ。彼は東北出身でもあり東日本大震災の被災地支援にも力を注いでいるという・・・

 <ベース:ブレント・ナッシー>
 <ベース:ブレント・ナッシー>

ブレント・ナッシーはカナダ生まれで、ジャズの名門校バークリー音楽大学を卒業している。ウィット・レイ・ブラウンに師事している。レイ・ブラウンはベースの三大巨匠の一人であるとベースの鈴木良雄さんから聞き、YouTubeを検索して観たことがある・・・ NYで活躍し後、1997年に来日してからは日本での活躍を続けている。

   <ピアノ:小池 純子>
   <ピアノ:小池 純子>

 名古屋に生まれ、20才からピアノトリオでプロ活動を始める。1991年上京し渡辺文雄らと活動する。1998年渡米し 俊英ミュージシャンを率いたクィンテットは絶大なる人気をはくしたという。

 NHKセッション’97’99に出演した。’99初リーダーアルバム『UH HUH!』でCDを発表した。 2009年、単身NYに渡り、サックス奏者 Jimmy Heath 氏をフィーチャーしたアルバム‘Danny Boy’を録音した。 

 今晩のバイソンさんはリーダーでもあり饒舌であった。何しろ追っかけとも思しき熟年女性フアンが15人ほど、今晩も賑やかに連なっていた・・・バイソンさんは、フアンの近くに座りジョークを交えながら、にこやかに対応していた。若い頃は俳優だったというが、今はお笑いタレントなみのトークを披露してくれる・・・メンバー紹介もユニークで、まるでトークショーのように笑いに満ちた楽しいジャズ・ライブを体験したのは初めてであった。

 ベースのブレントは名前ナッシーですと紹介した。彼も日本在住が長く、そのダジャレを十分理解できている様子だった・・・

 彼が語った弓の解説は興味深かった。弓の弦はロシアの寒い地方で育った雄馬の尻尾がむいている。雌馬の尻尾にはおしっこがかかってしまうのでダメだと語った・・・

 その弦を取り替えると3万ほどかかるが、ワックスを塗らない新しい弦のままでは、弾いても全く音が出ませんよと教えてくれた。

 これを片言の日本語で、しかも真顔で語られると妙に信憑性を感じると同時に、その仕草を見ていると笑いがこみ上げてきた・・・

 それは私だけではなかったようで、時々どっと笑い声が上がった。

バイソンさんが、その弓のお値段の話を持ち掛けた。今使っているのは20万くらいだが、注文してから3年待って作ってもらった弓は60万位だったと言った。今では入手できない木材を使い、1カ月に1本しは製作できなから妥当なお値段であろうとも語った。

 ナッシーさんが「今回その弓を忘れ来てしまった」と話すとバイソンさんが、すかさず「CDはその弓を使って演奏していますから、是非とも聴き比べてください」と付け加えた。

 確かに彼の弓を使ってのソロ演奏は素晴らしかった・・・

 これまで、こんなに好い音色を聴いたことがなかったように思う。

 ピアノの小池純子は我らのお姫様ですと紹介した。今回も一ノ関、福島、宇都宮と廻って来たが、彼女は後部座席のファーストクラスに座り、二人に交代で運転して来た・・・ところが高速道路で疲れうとうとしている時に後ろから運転を交代すると声がかかると、途端に目が覚めますよとジョーク・・・

 小池さんは「お二人はご自分の楽器を現地に持って行けるが、ピアニストは現地に備えてあるものを使わなければならないので大変ですよ」と語った。

 岩手の山間部の小学校では、ある音が狂っていて苦労したと付け加えた。

 今回はCD発売ツアーだけあってセットリストはCDに収録されている曲が多かった。でも、最初の曲はバイソンさんの馴染み客からリクエストされた「テネシーワルツ」で、観客の心を掴んだ。それに悪ノリの客が続けて「テイク・ファイブ」をリクエストしたら、小池さんに「四つまでしか数えられないの」と体よく断られいた・・・

 でもフアンを大事にするバイソンさんは、第一ステージが終わるとピアノで「テイク・ファイブ」のイントロを弾いてあげていた。そして第二ステージは「テイク・ファイブ」からスタートした・・・

 演奏を終えて「このトリオで初めて演奏しました。サビをベースでやったのも初めてですよ」とバイソンさんが語った。確かにサビはサックスですよね!それをしっかり聴かせてくれたベースのナッシーさんは大した腕前だ・・・

 開演前のバイソンさんのドラム教室を見てドラミングに興味が湧いた。ジャズのドラムはリズムセクションでいわば裏方的存在で、大抵はバンドの奥の方に居るが、今日は最前列の私から数メートルのところでバイソンさんが叩いている。こんなに近くでドラミングを見られるチャンスはめったにないと思い熱心に観させてもらった。帰りに息子からドラムばかり見ていたねと言われるほどだった・・・元々私はドラムが好きだったが、自分を主張したがる出しゃばりのドラマーは、あまり好きになれなかった。バイソンさんは「叩き過ぎないドラマー」との評価が高かったし、私の好きなタイプの一人である。

 若い頃はボディビルをやっていて筋肉隆々でドラムを叩いたら、ライブハウスで「まるで野牛のバイソンみたいだね」と言われたのが名前の由来だと話してくれた。

 私は小学生の頃にぶかぶかの大きなゴム製スキー靴を買ってもらい、つま先に古い靴下を詰め込んで使っていた。そのスキー靴も中学の頃にはつま先が痛かった。高校に入り、初めて買ってもらった皮のスキー靴には「BISON」と刻印されていたので野牛バイソンの事を知っていた・・・ 

 ライブが終わって一緒に写真を撮らせてもらった・・・こんなにワイワイ賑やかに観客と交流のあるジャズライブは初めてだ。

 いつもライブでのお喋りが多くて演奏時間が無くなってしまうのだとバイソンさんが言っていたが、その通りで本当に楽しい時間を過ごさせてもらった・・・

 帰りがけにバイソンさんが、オーナーにファーストアルバムのLP版を届けるから、渡して上げてくださいと頼んでいた。そのお宝が楽しみですね・・・

 今回のCDには、スタンダードジャズやボサノバの曲を選び、横浜のライブハウス「おとくらぶWARANE」の120年を経たピアノの名品に惚れ込んだ小池さんの要望で収録されたものだという。これはワインでも呑みながらゆったりした気分で聴いていただく、大人向けのCDですとバイソンさんが言っていたので、ジャズの好きな友人に1枚購入した。

 気に入ってくれると嬉しいが・・・

 このブログが書き終わったら送ることにしている。