Sumida Street Jazz Festival 2017

8月18日~20日 隅田ジャズフェスティバルが開かれていたので、20日にふらりと出かけてみた。JR両国からJR押上にわたる屋外でのストリートジャズである。JR錦糸町駅周辺に多くの会場があったので、錦糸町までの往復切符を買い求めて出かけた。

 錦糸町駅に降り立つと駅前に伊藤佐千夫の歌碑を見つけた。伊藤佐千夫と言えば、何度も映画化された「野菊の墓」が知られているが、正岡子規に師事した歌人としても著名である。伊藤佐千夫は東京都内で牧場をやっていたことは知っていたが、その地がここ錦糸町であったとは初めて認識した。この歌碑には、次のように刻まれていた。

 

 よき日には 庭にゆさぶり 雨の日は 家とよもして 児等が遊ぶも

 まずは昼食をとラーメン屋を探したが見つからず、パスタを食べた。外へ出るとジャズが聞えてきた。ちょっとしたスペースに仮設のステージが作られジャズが演奏されていた。会場が押上から両国まで広範囲に点在しているので、会場を結ぶシャトル巡回バスが運行されていた。

 歩いて錦糸公園のメイン会場に向かった。

結構広い公園で、ビルの間からスカイツリーが見えた。その公園の奥の方にはメインステージが設けられ、公園の入口近くにはスポンサー提供のサブステージがあった。

 今日は日曜日で公園には既に多くの人々が家族ずれで集まってきていた。

 まずサブのグリーンステージのジャズを聴いた・・・打楽器奏者・石黒理恵さんが率いるバンドである。女性のサックスプレーヤーが心地良い響きを聴かせてくれた。

 ステージが終わったのでメインステージに向かった。入り口で生ビールを一杯仕入れてステージ前のベンチに陣取った。

 ステージではスタッフが次のステージの準備を進めていた。時折プレーヤーが登場し自分楽器の音響のチューニングを繰り返していた。暑い中そんな様子をぼんやり眺めながらビールを呑んで待った。そころが開演が近ずくと、混雑が予想されるからと折角確保したベンチが撤去されてしまった・・・

 開演となり登場したのが「浅草ジンタ」というバンドであった。ところが、これがジャズなのかと耳を疑うような大きな音響を鳴り響かせ、ラッパーが何か歌いだした・・・私も息子も好みに合わなかったので早々に退散した。

 行き場を失い、あまりに暑いので近くの商業施設で休息をとった。

 時間を見計らい、お目当にしてやって来た「RUIKE SHINPEI 5piece band」のステージに向かった。やはり人気トランペッター類家心平だけあって、既に多くの観客が詰めかけていた。私は先ほど100円ショップで小さな腰掛を入手していたが、それを使うスペースは見つからなかった・・・

 彼の左の頬をご覧ください。こんなに風船の如く膨らんで、大丈夫なのかと心配になるほどであるが、トランペットの音色は高らかに、しかも透き通り観衆の心に刺さった。皆、その場に釘付けになってしまった・・・

 彼の演奏に合わせて、おのずと息を止めて聴き入るほどであった。今回の5人のメンバーは若手中心で、どちらかと言えばロック系の激しい曲目が多かった・・・私はどちらかと言うとスローテンポのバラード系が性に合う。そんな曲目を彼がミュートで吹いているのに、バックのドラマーにドカドカ叩かれてしまい私としては興覚めであった・・・

 でも、彼は実力派若手トランペッターとし山下洋輔に請われ、9月2日の東京ジャズにもスペシャルゲストとして出演していた。やっぱり大したもんです。

 次もお目当ての伊藤君子さんのメインステージに向かった。その時、広場を音楽隊が行進して来た・・・顔見知りのフアンや子供たちがその後に続いていた。まったくお祭り気分で、見ている方までウキウキしてしまうのは不思議だ。こんな時に似合うのは、やはりニューオリンズジャズだ。取り分け「聖者の行進」などがピッタリで、思わずサッチモ(ルイアームストロング)のあの大きな目とごつい鼻、しゃがれ声が浮かんで来るのも好いもんだ・・・

その先に進むとメインステージの反対側にイベントステージがあり、子供向けに色々なイベントが行われたようだ・・・多分、氷の彫刻の実演が行われた跡だと思うが、何か動物の姿をうかがわせる氷の塊があった。鋭角的に彫られた氷の彫刻もこの暑さで溶けてしまい、この写真からだと何であったのか判別できなかったが、息子の写真を見ると二頭のイルカであった・・・撮影時刻は15時17分。

 メインステージでは「タケカワユキヒデ&小林香織」の演奏が続いていた。私でも知っているあの「ガンダーラ」「銀河鉄道999」を歌っていた人だ。まだまだ人気があり大勢の人が詰めかけていたが、次のステージのためにその人混みをかき分けながら、前へ前へと進んだ。

 この写真の距離まで進み、携帯用の椅子に腰かけ、生ビールを呑みながら舞台が整うのを待った。

 ステージのセッティングには、かなり時間がかかる。それぞれのプレイヤーが自分が演奏する楽器の音響をそのステージ環境に合わせてチューニングして、納得のいく音を確認させて行く作業なのだ・・・熊谷のSPACE1497で野力奏一さんとのデュオでお会いしたことのあるベースの坂井紅介さんが出て来た。

 そしてボーカルの伊藤君子さんも何やら言葉を発しながら、スタッフに指示を出し調整を繰り返していた。伊藤君子さんのライブは今回が初めてだ。

 このステージでは撮影禁止のアナウンスがなかったのでスマフォで写真を撮った。演奏が始まると前に座って居る人が皆立ち上がるので必然的に立ち上がることになるが、この時も20センチほどの腰掛が役に立った。写真を撮る時だけ、その椅子に乗っかった・・・

 伊藤君子は 香川県小豆島生まれ、4歳の頃にラジオから流れる美空ひばりの歌声に魅せられ、歌手を目指し、演歌歌手としてデビューした語った。彼女はとてもトークが上手で、あっという間に聴衆を引き込んでしまった。中でも伊奈かっぺいさんと出会い、彼の勧めで津軽弁のジャズを始めた経緯は面白かった。そして歌い出した「津軽弁ジャズ」は完璧であった。秋田で育ったの私はほぼ理解できたが、息子にはメロディーは判っても、歌詞はおそらくチンプンカンプンで、何と言っているのか解らなかったことでしょう・・・

 その中で、坂井紅介さんがベースソロで津軽三味線のパートを演奏してくれた・・・紅介さんのベース奏法は、大したもんだ。

 今回のステージで、伊藤は生誕80周年を迎えるひばりの名曲をジャズにアレンジし、カバーしたCDから多くの曲目を歌った。

01.東京キッド

02.愛燦燦

03 .川の流れのように

04.津軽のふるさと

               05.一本の鉛筆

               06.リンゴ追分 

 美空ひばりを敬愛し憧れ続けてきた彼女ではあるが、その歌唱は決して美空ひばりの物まねではなかった。ひばりの歌が彼女の心で消化され、彼女の歌として演歌がジャズの雰囲気に生まれ変っていたように思われた。特に「一本の鉛筆」は、低音で言葉を噛みしめ、呟くような歌い振りは心に沁みた・・・

 

07.魅惑のワルツ FASCINATION

08.慕情 LOVE IS A MANY-SPLENDORED THING

09.恋人よ我に帰れ LOVER, COME BACK TO ME

10.スターダスト STARDUST〈BONUS TRACK〉

11.スカイラーク SKYLARK

 彼女が、ひばりへの想いを込めた歌詞を自らが書き上げた「SKYLARK」は、彼女自身を象徴しているように思えた。 

 最後のステージ挨拶で深々を頭を下げると会場から大きな拍手が巻き起こった・・・

そして、集まってきた多くの観衆は、しばらくの間その場を動こうとはしなかった。

 彼女は、客席に背を向けてステージを支えてくれたスタッフに向かっても頭を下げた。

このことから彼女の謙虚な姿勢から、そのお人柄がうかがえて初めて聴いたライブであったが、私はますます伊藤君子というシンガーに親しみを感じた。

 今も「Kimiko Sings HIBARI」のCDを聴きながらブログを書いている・・・

 最後になってしまったがメンバーは、

伊藤君子:ヴォーカル

宮本貴奈:ピアノ

坂井紅介:ベース

加納 樹麻:ドラム

と素晴らしいプレイヤーであった。

 ステージ終了後、CDにサインをもらうために列に並んだ。息子が数枚のCDを持っていたので、私も列に並んだ。

 やはり伊藤君子さんは気さくな人であった。長い列が出来ていたのに一枚ずつ丁寧にサインしながら、私と息子を見比べて「親子ですか。」と尋ねた。

そして「沢山CDを買っくれて、ありがとう。」と言って握手をしてくれた。

 どうも坂井紅介さんはシャイな人らしく、サインの席には来られなかったが、近くで談笑しているのを見かけていたので、ご挨拶したいと思っていたのに、気が付いた時には姿は見えず残念なことをした。

 今日は、暑い野外ステージを歩き回ったが、満足な一日であった・・・